犬の涙焼けの原因とは?対策方法や予防法を解説
眼の周りが涙の成分によって茶色く変色してしまう「涙やけ」。涙の過剰分泌や異常排泄などによる「流涙症」が原因で引き起こされる現象で、トイプードルやマルチーズ、チワワなどの小型犬種でよくみられます。
健康的に問題のないケースもあれば、視力低下や失明などに繋がる深刻なケースもあります。そこで今回は、涙やけの原因や対策法、予防法について解説します。
- 犬の涙やけとは?
- 犬の涙やけの主な原因とは?
- 涙やけで病院に行くべき症状とは?
- 涙やけを起こしやすい犬の種類とは?
- 犬の涙やけの対処法は?
- 犬の涙やけの予防法は?
- 犬が涙やけになったときの治療内容は?
- 愛犬のもしもに備えて保険に加入しましょう
- まとめ
犬の涙やけとは?
犬の涙やけとは、目頭からその少し下あたりの毛色が、涙の成分によって茶色く変色している状態を指します。
通常、犬の眼球は、外の刺激から眼球を守るために表面が涙で覆われています。涙は涙腺から分泌され、涙点(るいてん)という瞼にある穴から吸い込まれ、涙小管(るいしょうかん)を通り、涙を一時的に溜める涙嚢(るいのう)、涙を排泄するための鼻涙管(びるいかん)の順に通り、最後は鼻腔(びくう)へ排泄されます。
涙やけがある犬の特徴として、涙が過剰に分泌されている、もしくはその涙の通り道に異常があり、うまく涙を排泄できない「流涙症」を引き起こしています。
犬の涙やけの主な原因とは?
涙やけを起こす流涙症は、主に3つの原因で引き起こされます。
- 涙の排泄回路の異常
- 涙の生産量が増加している
- 眼球の表面における涙の保持能力の低下
涙の排泄回路に異常がある
涙の排泄回路の異常により引き起こされる流涙症を「閉塞性流涙症」と呼びます。通常涙は、眼から涙点→涙小管→涙嚢→鼻涙管を通って鼻に排泄されますが、これらのどこかに異常があると、涙が鼻から排泄されないため、眼から流れ出てしまいます。
中でも、植物のノギやほこりなどの異物、歯の汚れや常在菌の増殖による細菌感染などが原因として考えられる「涙嚢炎(るいのうえん)」と、先天的な異常や涙嚢炎による粘液の閉塞などが原因で鼻涙管が詰まる「鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)」がもっとも多いとされています。
涙の生産量が増加している
涙の生産量の増加により引き起こされる流涙症を「分泌性流涙症」と呼びます。角膜への刺激や、眼の痛みなどが原因で涙の生産量が増加することがあります。
角膜への刺激や眼の痛みは、さまざまな原因が考えられます。例えば、角膜へ刺激を与えるものとして代表的なものがまつげです。まつげの生えている位置や向きが正常ではなく、角膜を傷つけてしまうケースも少なくありません。
また、それに伴い、角膜の傷により「角膜潰瘍」や、眼の炎症による「ブドウ膜炎」や「緑内障」なども引き起こされるケースがあります。
眼表面の保持機能が発達していない・低下した
犬のまつげの生え際にある「マイボーム線」は、油分を分泌して涙を蒸発させにくくする役割を担っています。その役割が低下または発達していないと、眼表面で涙が保持されにくくなり、涙が眼の表面から流れ落ち、涙やけに繋がります。
涙やけで病院に行くべき症状とは?
命や健康にあまり影響がないといわれる涙やけですが、中には眼病を患っているケースも少なくありません。ここでは、涙やけで病院に行くべき症状を解説します。
膿性の目ヤニがあるとき
先述した「涙嚢炎」や「鼻涙管閉塞」などで細菌感染を起こしている場合、黄色いドロッとした膿性の目ヤニがみられます。犬の目ヤニは、健康的な犬でも赤茶色の少量の目ヤニや透明な涙、涙やけが見られることがあります。しかし、同時に眼を痛がる様子があったり、普段よりも涙、目ヤニが増えたときは、眼科疾患の可能性があるので注意が必要です。また、目ヤニのニオイがきついと感じる場合、細菌が繁殖しているサインかもしれません。
放置すると細菌感染が拡大し、眼科疾患のみならず、皮膚病など他の部位の炎症や病気を伴うこともあるため、膿性の目ヤニがみられる場合は、早急に動物病院を受診しましょう。
眼の角膜に傷がついているとき
まつげの生えている位置や向き、まぶたの機能疾患により、角膜に傷がついている場合も、動物病院での受診が重要です。角膜に傷がついている場合、痛そうに眼をシバシバさせたり、頻繁に眼を掻く仕草がみられます。そのように、外から刺激を与えることによって炎症を起こし、ブドウ膜炎など、視力低下や失明に至る可能性がある眼科疾患を引き起こす恐れがあります。
涙やけを起こしやすい犬の種類とは?
小型犬
トイ・プードルやマルチーズなどの小型犬は、先天的に涙の排泄回路に異常があることが多いといわれています。中でも、鼻涙管の狭窄や閉塞が多く、鼻涙管閉塞による涙やけを引き起こしやすいといわれています。
短頭種
一般的に、シー・ズーやパグなどの短頭種は、まつ毛による角膜炎症を起こしやすいことや、頭部の構造により鼻付近の被毛が眼に接しやすいことから、流涙症を起こしやすい犬種といわれています。
涙やけを起こしやすい犬種
上記のような犬種以外も、柴犬やウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアなど、アレルギーの起こりやすい犬種も注意が必要です。
犬の涙やけの対処法は?
愛犬に涙やけがみられる場合、どのような対処法があるのでしょうか。ここでは病院での治療と、家でできるケアをご紹介します。
病院の治療を受ける
犬の涙やけは、放っておくと重大な眼科疾患や二次被害を引き起こす場合があります。そのため、涙やけを引き起こした原因である病気をしっかり治療することが重要です。また、これまでも記載した通り、涙の排泄回路の異常や、何らかの角膜への刺激など、涙やけの原因はさまざまです。その原因を正確に把握するために、動物病院で検査してもらうことが好ましいです。
動物病院での治療は、軽度の場合は、点眼薬や内服薬を処方されることが多いです。一方、涙の排泄回路に異常があるなど、重度の場合は外科的な治療が必要になるケースも少なくありません。
涙をこまめに拭き取る
家でできる対処法として、涙をこまめに拭き取ることが大切です。涙で目の周りが湿った状態になると、細菌が繁殖しやすくなり涙やけが悪化します。涙を拭き取る際は、眼球を傷つけないように注意し、コットンやガーゼで優しく拭き取ります。涙で毛が固まっている場合には、コットンなどで毛を優しく濡らし、目の細いコームでといてあげると取れやすくなります。また、トイ・プードルやマルチーズなど、眼の周りの被毛を定期的にトリミングすることで、清潔に保つことができます。
犬の涙やけの予防法は?
痛みを伴わない流涙症は、先天的なものや構造的な原因であることが多いため、予防は難しいといわれています。涙やけがみられる場合は、上記のように、涙をこまめに拭き取ることが大切です。また、アレルギーを持っている場合、子犬のときから生活環境に注意してあげれば、涙やけの予防に繋がります。
犬が涙やけになったときの治療内容は?
犬が涙やけになったときの治療内容を原因別で解説いたします。
鼻涙管洗浄
涙嚢炎や鼻涙管閉塞など、涙の排泄回路の詰まりが原因である場合、涙点から細い管を入れて洗浄する「鼻涙管洗浄」をおこないます。麻酔をかけて管を通し、詰まりを除去する治療法ですが、詰まりが取れなかったり、取れたとしても再び詰まってしまうケースも稀ではなく、効果が限定的になってしまうことがあります。
費用は病院によって異なりますが、麻酔費用を含めて1〜3万円程度が目安です。
外科手術
重度の涙嚢炎や鼻涙管閉塞など、涙の排泄回路のどこかが完全に塞がれていたり、先天的に構造上の異常がみられる場合は、外科手術による治療が必要です。例えば、先天的に瞼が内側を向いており、まつ毛が眼球に刺激を与えていることで、流涙症を引き起こしている場合、瞼を正常な形状にする外科手術を施します。
また、1つ目でご紹介した鼻涙管洗浄で効果がみられない場合、涙管に人口管を入れる手術を施すケースもあります。
費用は病院によって異なりますが、20〜40万円程度が目安です。
薬物・抗生剤の投与
細菌感染がある場合には、抗生剤の点眼や内服による治療を施します。これまで解説した鼻涙管洗浄や外科手術に併用することがあり、軽度から重度まで包括的に活用される治療法です。
例えば、先述したように、マイボーム腺の役割が低下してしまう「マイボーム腺炎」は、抗生物質の投与をおこなう内科的治療が一般的です。予防が難しく、かつ再発しやすい病気なので、長期間の通院が必要となるケースが多いです。
治療費は、1回の通院につき5000円〜1万円程度が目安です。
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まとめ
いかがでしたか。今回は、犬の涙やけの原因と対策法、予防法について解説しました。
涙やけを引き起こす原因によっては、長期的な治療や、外科手術など大がかりな治療を施すケースも少なくありません。
もし、愛犬に涙やけがあれば、その原因を正確に把握するために、病院で検査をおこないましょう。そして、涙やけの対策法や治療法を知ることで、より楽しい素敵な時間を愛犬と過ごすことができるでしょう。